見ろ、見るな。これまでの、他者との関わりなど、ぶざまなものだ。
書け、書くな。これまでに、記した言葉など、ささいなものだ。
ずっとひとりでいればよかった。という後悔の夜について、思いを馳せる。
波打ち際に心臓を捨てることについて考える。
やわらかな風の日に、蒲公英の綿毛が舞うことについて。
やさしい泉の水が枯れることについて。
刃が光り、わたしは、この世でいちばん大切な誰かを徹底的にめちゃくちゃに傷つけてみたかった。
わたしにとってこの世で最も尊いものを破壊してみたかった。
粉々になれ。きらきら血を流せ。
静かな夜の白い明かりのなか、立ちすくむ身体が風に冷えていた。
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