エッセイ なにもかもなくしたあとのほしぞらを涙が濡らす 光になりたい 月並みにも、書くことしかできない、と思っていた。 私にはほかに何もできなかった。人の役に立ったことがなかった。何をしても失敗で、人を傷つけ、迷惑をかけた。他人を不幸にしたことすらあった。 書くことだけが、私のすべてだった。 なのに、それすら... 2023.10.14 エッセイ
エッセイ “妹”の話 僕たちは、実際には一人ではなく、兄妹二人で生きていた。僕は本当に彼女の兄なのだろうかと疑問に思うことは今でもあるが、彼女が僕を兄さんと呼ぶのだからきっと、彼女は僕の妹で、僕は、彼女の兄なのだろう。 妹の事は、誰よりも大切だった。 僕が出会っ... 2023.10.14 エッセイ
詩 【鐘の音】 また、目を閉じた。緩やかに死にたくて。 午前二時。 眠るのが怖い。時計塔が鐘をうつ。 時は私たちからあらゆるものを奪っていくから。柔らかな陽だまりや、繋いだ手の温度。笑み。言葉。親しみ。 影は地平線の彼方へ遠く伸びていく。黄昏。 去ってゆく... 2023.10.14 詩
エッセイ 呼吸を、言葉を 生きていて、不思議だと思うことがある。 私は、絶望から筆を執ることがある。絶望について語り始め、絶望について語り続ける。それなのに、気がついたらそれはいつの間にか、希望を語る言葉になっている……。 そう言うことはしょっちゅうあった。どんなに... 2023.10.14 エッセイ