2024年3月30日
実家の押し入れに頭を突っ込んで、子供の頃遊んでいたおもちゃを引っ張り出す。すべて残っているわけではないが、一部は今もしまってある。綺麗なままのものもあるし、捨てるのは勿体無いけれど、譲り先もない。
細々したものを集めるのが好きだった。家の中に家具を並べて、キャラクターたちの生活を思い描く。今思えばああいうおもちゃは、夢のような綺麗な家には住めない多くの子供達にも、夢や楽しみを与えてくれるものだったのだと思う。きれいな赤屋根の、二階建ての家。はしごで昇る二段ベッドや、ふかふかのソファ。広い庭と花の鉢植え、家庭菜園の畑、食べ物でぎっしり詰まった冷蔵庫。
その家に暮らすのが、動物たちの家族であることが大事なのだと思う。
おもちゃを広げて、子供の頃は何時間でも、いつまでも遊んでいられた。親に呼び止められるまで。でも今では、そんな呑気には遊んでいられない。すぐに我に返る。「こんな事してる場合じゃないな」「遊んである場合じゃないな」。誰に言われるでもなく片付けて、もとの段ボールに入れて、押入れの奥に戻すことになる。
「するべきこと」や「しなければならないこと」に囚われていなかった頃。何にも邪魔されず、時間が過ぎることも怖くはなかったあの頃。戻りたい、と望むことに、あまり意味はないだろう。
一度生きた過去を、自分の中にある「あの頃」を、憶えている限り大切に、この先を生きていくことについて、望むべきなのだと思う。
今日読んだ本
◆「シノダ!チビ竜と魔法の実」(富安陽子、2003、偕成社)
古本屋にて、昔好きだった児童書を探しに行った。目的の本はなかったが、昔図書館で読んだこの本も好きだったことを思い出した。空に雨雲の巣を作る竜の子供が、シノダ家の風呂場に迷い込んでくるところから物語は始まる。シノダ家のお母さんの正体はキツネで、人間とキツネのハーフである三人の子どもたちは、みんな不思議な能力を持っているのだ。個性的なきつねの一族のキャラクターと、シノダ家の面々が織り成すにぎやかな物語にワクワクと引き寄せられ、読みやすさもあって一気に読んでしまった。
あとがきには、本作のアイデアとなった「信田妻」についての解説があった。「信田妻」は、説教節または古浄瑠璃の作品であり、これも人間の男とキツネの女が結婚するという内容の話だ。この二人の間に生まれたのが、陰陽師安倍晴明だという。
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