2024年4月9日

 やや、不安定な日が続く。
 決断というものを、しかけて、立ち止まる。
 どうにか、会社説明会というのに参加した。全く、知らない会社である。去年の夏頃は、色々就活と呼べそうな営みをしていたのだが、結局そういった活動から手を離してしまったので、準備や情報には今ひとつ欠けている。

 就活、というものが、とにかく嫌だ。
 色々と会社や、事業について調べていく。そこに自分が囚われていく未来というのを想像すると、なんとも嫌な気分になる。エントリー、説明会、選考、面接、自己PR、ガクチカ、どんどん頭が締め付けられていく。

 何がそんなにも嫌なんだろう、と考えてみる。
 すると、案外、その点はハッキリしない。条件反射のごとき嫌悪感。

 結局は生きていく覚悟の話へ帰結するのだろうか……。
 あるいは嫌悪の連鎖的な反応なのか……。

 まぁ、なんか、もうどうでもいいけど……。

 けっきょく、ぼくは生きることが一番大事だ、と思った。
 社会的信用、名誉、いわゆる『いい会社』に務める……新卒カードとか、学歴とか……そんなものが生死を左右する世界は、つらすぎる。生きることが一番大事だ。それでよいではないか、できるかぎり健康に(メンタル面も含め)、できるかぎり生活していくことが、何よりも大事だ。それ以外のことへと価値が逆転して、生きることそのものが破壊されるようなことがあっていいだろうか?

 失敗したら人生に価値がなくなるのだろうか? 学歴がなきゃだめ? 良い大学出て、頑張って就活して、良い会社に努めて立派に自己実現。じゃなきゃこの人生は無価値だって? 

 そうかもしれない。けど、ぼくはそんな世界は愛せない。そんな世界で生きていたいと思ってないことに気づく。

 そんな風に、ぼくらの命を壊されてたまるかって思う。ぼくらはただ生きてたいだけだ。そうじゃないかな?
 だから、そんな世界でみんなが苦しんでるとしたら、悲しいことだ。

 確かに、色々欲しいものはある。何よりも、人から認められたいよ。できれば、親にね。結局、どこまでいってもそうなんだと思う。いくら親なんてカンケーないって思おうとしても、ぼくの場合、臆病な子供はそのまま臆病な大人に育っただけだった。それが無理だってどっかで気づいてるから、社会から認めてもらうぞって思ったりね。
 でもそこに終わりはなくて、その先に帰りたかった場所があるわけでもないんだ。

 結局これも、負け組の戯言ってことになるのかな。
 頑張らない言い訳なのかな。

 でもぼくは、なによりもただ生きていきたい。ただそのための努力がしたいだけ。それ以上、何も望めないよ。弱い生き物だからそう思うのかもしれないね。でも、別に、にんげんになれなくてもいいやって思ってしまう。
 生き物でいられればいいって。

 とはいえぼくも、他者に迷惑かけるのは好きじゃない。ひとりで生きるために、この世界ではお金がいるので、それが現実なので、だから仕事を探すよ。
 別に就活のために生きて、就活のために死ぬんじゃないよ。
 全部、生きて、死ぬ、それだけのためだよ。

読んでいる本

『〈ほんもの〉という倫理』(チャールズ・テイラー、田中智彦 訳、ちくま学芸文庫、2023)

 カナダ出身の政治哲学者、チャールズ・テイラーの著書の翻訳。ちょっと今の私には難しい……。けど、訳者あとがきや解説が読解の助けになる。

 近代社会に特有の不安について。ひとつは、個人主義により道徳の地平が消失すること。ふたつは、道具的理性の浸透。みっつは、「穏やかな専制」と無力。これらについて、わかりやすい解説がなされていて、その点は理解して読み進めることができる。

〈ほんもの〉とは、本書において、近代に特有の道徳的理想をさしていう言葉で、authenticityの訳語となる。この〈ほんもの〉が一体どういうことなのか、そのニュアンスをよく理解するのがむずかしい。

 自分らしさ、という意味を補ってはどうかと解説にある。現代においては、そのような意識はごく当たり前のものとなった。人々は当たり前のように「自分らしさ」を求めているし、また、求められている。ほんとうのじぶんらしさ、すなわち、〈ほんもの〉という理想、ということか。

 その理想は「近代に特有」として論じられている。つまり、それ以前にはなかったものなのだ。歴史を振り返れば確かにそうであろうが、それ以前の世界に生きる感覚はなんとも現代人には直感しにくいものである。

 本書が提示するのは、その〈ほんもの〉という倫理の回復こそが、よりよい生と未来のために有意義なことだという価値観である。

 哲学、倫理学、社会学、政治学……と、その文脈は多岐にわたり、なかなか読み応えがある。知識不足が堪える場面もあるが、読み進めたい。

 

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